2010/02/11

「奇跡のリンゴ」を聞いて

先週、中部経済界の経営者が多数参加する中部財界セミナーに参加しました。
1泊2日の泊りがけで、夜も楽しく懇談です。6年前に中部経済産業局長として参加したのが、ついこの間のように思い出されます。

パナソニックの大坪社長は講演で、環境革新企業としての取り組みを披露されました。分科会での討議あり、パネルディスカッションありと、なかなか多彩な内容でした。
中でも印象的だったのが、「奇跡のリンゴ」で大反響を呼び起された、青森のリンゴ園農家、木村さんのお話でした。当日、珍しく雪模様でしたので、開口一番「青森から雪を持ってきました!」さすが引っ張りダコの人とあって、掴みを心得たスタートでした。ゆっくりとした語り口の一言一言に味わいがあり、思いが胸に伝わってきました。

殺虫剤なしで生育する確率10%と、最も難しいリンゴで無農薬、無肥料の自然栽培を成功された意味は大きい。世間で「奇跡のリンゴ」と言われるのも肯ける。失敗の連続で、10年近い無収穫という想像を絶する日々を支えられた御家族には本当に頭が下がります。しかし、こういう取り組みにはもっと公的支援もあってもよいのではないでしょうか。個人のリスクとしてはあまりにも大きすぎます。長年の化学肥料、殺虫剤の使用で土壌が固く痩せていき、国土の荒廃は著しく進行しています。また例えば、人参一本に含まれる栄養分も昔とは比較にならないほど低減している結果、消費者は不足分をサプリメントで補わざるを得ない事態になっています。国の政策も短期的収穫量だけでなく、長期的視点が必要です。今、連日農園への見学者は絶えず、年間1万人という。韓国からも勉強にやってくるそうです。化学肥料、殺虫剤を販売する農協にとっては素直には喜べない面もあるでしょうが、ある農協は木村さんの自然栽培に農協挙げて取り組もうとしています。このように地域ぐるみの取り組みになれば、ブランド化することにもなります。木村さんの取り組みが投げかけたボールを大きな構えで受け止めたいものです。