今、横浜で閣僚会議が開かれているAPEC。22年前、私はこのAPECの創設をめざして連日深夜まで働いていた。実はAPECの創設は通産省(当時)の構想で、当時の私の直属の上司がその陣頭指揮に立っていた。その頃、欧州ではEUの設立への動き、米国では米加自由貿易協定と動きが急な中、日本が国際的に孤立しないよう、いかに戦略的に「仲間作り」をするかが問われていた。そこで出てきたのが、豪州、米国も巻き込んだアジア太平洋構想であった。
もう時効であろうから、日本の内情を白状すると、驚くことにこの構想に当初外務省は反対していたのだ。当時通産省の言い出したことだということが理由の本音のようである。そこで通産省は豪州に働きかけ、ホーク首相の提案になっていった。本来ならば日本の首相の提案で創設したかったところだった。さらに米国も当時、ベーカー国務長官が賛同し、流れは決まった。
つまらない省庁間の確執はさておき、大事なのは「構想力」である。世界の潮流を見定め、これからの日本の立ち位置を見極め、そして大きく構想していく。そしてそれを実現するため、豪州、米国、ASEANなどの他国をどう動かすかという戦略論もつめて考える。当時の役所には気概と気迫がみなぎっていた。本当にやりがいのある経験であった。
今、どうだろうか。22年たって、そのAPECの議長国として、構想力と戦略性をどこまで期待できるのだろうか。今、日本政府に必要なのは、あの気概と気迫ではないだろうか。