2010/04/10

[違和感あるアジア内需論」に違和感あり!

 本日の日経新聞に標題のコラムが掲載されていた。筆者にご無礼かもしれないが、どうもアジア内需論の正しい理解のうえでのご批判のようには思えない。そこでアジア内需論の内容を確認しておきたい。
まず、正しくは「東アジア内需論」とすべきだろう。別の経済雑誌に「20億人アジア内需を攻める」という記事があったが、これも言い過ぎだろう。私自身、3年前から「東アジアの6億人は内需」と言ってきた。拙著「メガ・リージョンの攻防」にも書かせていただいた。
  
 最近の東アジア、特に中国の沿海部では所得水準の向上によって中産階級が勃興し、人々の趣向、ライフスタイルが似通ったものになりつつある。コンビニ文化、公文式に代表される教育文化、アニメなどコンテンツ、食文化などなど。従来はこれらの産業は内需型産業として位置づけられてきたが、今やその市場は東アジアに拡大している。ターゲットは東アジアの6億人の中産階級だ。ビジネスの意識としては、「東アジアは内需」としてとらえるべき領域が急速に拡大している。これがいわゆる「東アジア内需論」のメッセージだ。

決して「アジアへの輸出全般を日本の内需のようにとらえよ」と言っているわけではない。また他の地域への輸出とは全く本質的に違うビジネスの実態を無視して、「アジア内需論は輸出主導の成長戦略」だと批判するのは的外れであろう。そもそも「輸出主導から内需主導へ」というスローガン自体が80年代の発想で、時代錯誤だ。

(広義の)輸送費が劇的に低下することによって、経済活動の空間が一挙に広がる。現在はその空間が欧州、北米とともに東アジア大に広がっている。企業の生産活動のネットワークしかり、国際宅配ビジネスなどの物流しかり、日帰りビジネス圏など人流しかりだ。
こういう経済圏の存在が,さらに上に述べた「東アジア内需論」を補強している。